良いすし屋を判断する基準
すし屋の値段は千差万別だ。着席しただけで1万円という高級店もあれば、回転すしに毛が生えた程度の値段で食べられるお店もある。では我々が「ここはいいすし屋だ」と実力を測るにはどのような点に注目すればいいのだろう?

東京築地市場の場外ですしを握る職人さんに、実力のあるすし屋の見定め方を聞いた。
「昔からすし屋の実力を測るポイントとして、光り物を頼めと言われています。これは下ごしらえ作業の善し悪しを見定めるためです。

例えばコハダは店の売上に貢献しない安いネタですが、小さい魚のためさばくのにも酢で締めるのにも手間がかかります。そのくせ手を抜くと味が顕著に落ちる恐いネタなのです。良い仕事がされたコハダは、身の柔らかさを残す程度に締まり、シャリに馴染みやすいよう身の間に包丁を入れて皮を折り返すなどの工夫が施されています。

ほかにもかんぴょう巻きも下ごしらえ作業の善し悪しが測れるネタだという。地味なネタだが、保存料である二酸化硫黄がよく洗い落とされていないと途端に不味くなるそうだ。こうした手間を省くため、下ごしらえせずにできあいのネタを購入するすし屋も最近は増えているそうだ。すし職人の出勤時間が極端に遅い店には気をつけたい。

また、ネタの仕入れ状況でもすし屋の実力がわかる。とくにすし屋の看板商品であるマグロが美味しいお店は、単純に良いすし屋と言っていいかもしれない。マグロのネタとしての寿命は?

4日。この間に使いきれるだけの量をこまめに仕入れ管理しているお店は、きっとどんなネタを食べても美味しいはずだ。



つまの再利用
仕事を覚えてくるにつれ、接客・皿洗い関連に加え、調理の一部を手伝う仕事も任されるようになった。
最初に覚えたのは、セットものの「にぎり」につける「お椀」の作り方だ。

開店前に、大鍋に具のまったく入っていない味噌汁を用意する。業務用だし入り味噌をお湯に溶かしただけのものだ。
これを弱火でずっと保温しておき、注文が入ると、手鍋に移して過熱。生わかめとあさつきを少々入れたお椀のなかにこの「味噌スープ」を入れるだけでできあがりだ。
この味噌スープに、力二を投入すれば「力二汁」、アサリを入れれば「アサリ汁」になるから、なかなか便利だ。力二汁に入れる冷凍の毛蟹は1杯100円もしなかったっけ。

頭をカットされた輸入のブラックタイガーえび(オレンジ色のゆでえび)は、曲がらないよう腹に竹串を刺して伸ばしてから茹でる。1 00匹も入った1箱(冷凍)で、5000円程度だった記憶がある。1カン(2匹)で500円ぐらい取っていたから、これもかなりの利益だ。アワビは水槽からとりだしたあと、貝殻から外しやすいようにたっぷりと片手いっぱいの塩をぬりつけてやる。そうすると苦しがって身をよじるから、ヘラではがせる(ぬめりを取る意味もある)。ちなみに、さざえやアワビの殻は、つぼ焼きやバター焼きに再利用するから、大きいものは捨ててはいけない。「つぼ焼き」を注文して、その殻と身が実は違うなんてことはけっこうある。

再利用といえば刺身のつま(大根)や菊の花。これらはあじのタタキから伊勢エビの活け造りまで、あらゆる刺身に使われる名脇役だが、 一度使うと魚の血で赤くなってしまう。
だが、それを捨てるなんてことはしない。金ザルに入れ、しばらく水に流しておけば、すぐ真っ白に戻るのだ。だから、夜遅い時間の「刺身のつま」は食べないほうがいい。

「ネギトロ巻」の注文が入ると、厨房の外に置いてある「ミンチ肉」の機械の出番だ。
「よろしく」と、赤身と皮に付着した脂の部分が無造作に入ったボウルを渡される。
赤身の色は暗色で、にぎりには使えない部分がほとんどだが、すべてをぶち込んでミンチにすると、「プチプチッ」という音と共に挽肉そっくりの「ネギト口」ができあがる。ただ、付着しているスジが多く、それがミンチのプロベラの部分にからまって動かなくなるので、途中1、2回はそれを取り除かなくてはいけない。
もともと客に出せない部分だけを集めて、1人前1800円もする「ネギトロ巻」に仕上げるのだから、よく考えたものだ。