21世紀も「健康」が食品の付加価値
歩きながらガムをクチャクチャ噛むことに眉をひそめる人が減って久しい。でも、なぜガムを噛むのかを問われて答えに困る人は依然として多いのではないだろうか。ガムを噛む効用は、あごが鍛えられる、眠気から逃れられる、頭がすっきりするなとさまざまだろうが、最近は虫歯予防が以前よりも明確な形で効能として加えられている。

そのガム市場において、キシリトール入りガムは、虫歯の原因となる酸を生成しない効能をうたい、ガム市場の三割を占めるまでに成長した。

食用油一千億円市場の一割は機能性食用油が占める。その中で圧倒的なシェアを占めるのが花王の「体に脂肪がつきにくい」とパッケージに明示した健康エコナクッキングオイル。厚生省から特定保険用食品の許可を得ているので効能を表示できる。食用油市場のトップ企業日清製油も効能をうたう機能性食用油市場の成長が無視できなくなった。

セブンイレブンの店頭には、99年から、健康食品専用コーナーが設けられるようになった。錠剤型の商品もあり、食品というより薬のような形だ。若さや明るさを売り物にするコンビニにとって、病気をイメージさせる薬はあわないという意見もあったが、好調な売上げを記録している。

ニチレイ、味の素、日本ハム、ハウス食品など食品メーカーも健康食品市場に新製品を投入しはじめた。明治乳業は、ピロリ菌抑制を訴求したヨーグルトで大ヒットを飛ばした。健康を付加価値としてアピールすることが販売増につながることを、食品メーカーの多くがあらためて認識しつつある。

もちろん、キャッチフレーズに敏感に反応する消費者の安易な商品選択行動を問題視する向きもある。動脈硬化を防ぐ効果が赤ワインにあるとの噂や話題が広がると、したり顔で赤ワインの効能を説く輩が増える。フランスでは心臓疾患が相対的に少ないという事実と赤ワインが、ポリフェノールの関与という科学的解釈を下地に結びつき、いつの間にか、赤ワインは健康に良いとの拡大解釈が幅を利かせる

地道に食品の効能、機能を訴えようとする食品メーカーからすれば、消費者の安易な健康願望に失望感をもつであろう。そういえば、99年にテレビ番組でヨーグルトの効能が伝えられた直後、ヨーグルト販売が5~8割増となり、欠品騒ぎが3月くらいまで続いた。

その程度の安直なメッセージに反応し、ヨーグルトだけで健康を買おうという人がいかに多いかを如実に示す事件だったが、食品業界の多くの人は、喜んで良いのかどうかわからないという複雑な心境だったであろう。健康をうたう功罪を肝に銘じたいところだ。

売れればよい、ではなく、だれに、何のために買ってもらいたいかを明確にすることが、健康を売り物にするメーカーに求められている